通俗道徳は戦時期までは公式的な価値観であったといえますが、戦後は「消費は美徳」と言われたりもして、一時は昔ほどではなくなったと思われます。しかし日本経済の停滞とともに、自己責任で弱者を切り捨てる通俗道徳が、耳になじみやすくなってしまったのでしょうか。
ただ本来の通俗道徳は、「勤勉」が真っ先に来るので、「コツコツ努力して積み上げる」ことを尊ぶ面があります。現在は弱者を切り捨てる思想として通俗道徳が転用される一方、勝者になるのに「コスパ」だの抜け道だのチートだのを求めてばかりで、コツコツやることはあまり重きを置かれない気がします。
そう考えていくと、21世紀型通俗道徳は、自らを省みてコツコツ努力するというプラスの面を失い、他者(往々弱者)を攻撃するツールに堕落腐敗したものであり、系譜上のつながりはともかく、実態としては別物と考えるべきなのかもしれません。コツコツ大事。