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#類体論へ至る道
P186 定理12.3 シュタイニツの定理
$K$を体とすると、$K$の代数的閉包が存在する。
(証明 )
変数$X$の$1$次以上の$K$係数モニック既約多項式全体の成す集合を$F$とする。
多項式
$F_λ(X)\in F,λ \in Λ$
の次数を$n(λ)$とする。
添字の集合$Λ$の各元$λ$に一つずつ各$F_λ(X)$に対して新たに不定元
$X_1^{(λ)},…,X_{n(λ)}^{(λ)}$
を用意して、これらの不定元全部を変数として得られる$K$係数の無限変数多項式環を$R$とする。
すべての$F_λ(X)$に対して
$G_λ(X)$
$=Π_{j=1}^{n(λ)}(X-X_j^{(λ)})-F_λ(X)$…①
$=y_1^{(λ)}X^{n(λ)-1}+…+y_n^{(λ)}$
と置いて得られる式の係数
$y_1^{(λ)},…,y_n^{(λ)}$
の全体から生成される$R$のイデアルを$\mathfrak{A}$と記す。
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まげ店長 (magemanager@mathtod.online)'s status on Saturday, 14-Jan-2023 11:07:59 JST まげ店長 -
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まげ店長 (magemanager@mathtod.online)'s status on Saturday, 14-Jan-2023 11:10:41 JST まげ店長 #類体論へ至る道
補題1より$\mathfrak{A}$が固有のイデアルを成すこと$(\mathfrak{A}\neq R)$が示される。
よって補題2より$\mathfrak{A}\subset \mathfrak{M}$なる極大イデアル$\mathfrak{M}$が存在する。
すると商環$Ω=R/\mathfrak{M}$は体である。
$a\in K$に対して
$\overline{a}=a+\mathfrak{M}$
を対応させる事によって$Ω$は$K$と同型な部分体を含んでいる事が分かるので、これを$K$と同一視すれば、$K \subset Ω$とみなす事が出来る。$Ω$内で$X_j^{(λ)}$の属する類$\overline{X_j^{(λ)}}$を$θ_j^{(λ)}$と書くと、$y_i^{(λ)}\in \mathfrak{A}$なので、
$Ω[X]$では補題2より①にて
多項式環で生成されるイデアルによる商環の多項式は零点を持つので
$∴G_λ(X)=0$
$∴F_λ(X)=Π_{j=1}^{n(λ)}(X-θ_j^{(λ)})$
となる。 -
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まげ店長 (magemanager@mathtod.online)'s status on Saturday, 14-Jan-2023 11:11:50 JST まげ店長 #類体論へ至る道
つまり$K$の任意の既約多項式は$Ω$内で1次式に分解される。
この式によって$θ_j^{(λ)}$は$K$上代数的であり、同時に$K$にすべての$θ_j^{(λ)}$を添加して得られる$Ω$は$K$の代数拡大であるという事が分かる。$Ω$の代数的閉性を示すために、$Ω$上代数的な拡大があるとして、その体の元を$α$とする。$α$はP186補題より$K$上でも代数的である。
したがって$α$はある
$F_λ(X)\in F$
の零点である。$Ω$において$F_λ(X)$は1次式に分解されるから、$α\in Ω$でなければならない。
よって$Ω$は代数的に閉じている。
よって代数的閉包の存在が示された。
(証明終) -
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まげ店長 (magemanager@mathtod.online)'s status on Saturday, 14-Jan-2023 11:12:29 JST まげ店長 #類体論へ至る道
補題1
定理12.3において$\mathfrak{A}\neq R$が成り立つ。
(証明)
$1\not\in \mathfrak{A}$を示せば良い。
仮に$1\in \mathfrak{A}$とすると、$\mathfrak{A}$の定義によって
$1=\sum_{k=1}^{n} y_k^{(λ)}f_k^{(λ)}$…②
となるような$R$の元$f_k^{(λ)}$が存在する。
$(f_k^{(λ)}$は有限個を除いて$0$である$)$
$f_k^{(λ)}\neq 0$
であるものを
$f_{k_1}^{(λ_1)},…,f_{k_p}^{(λ_p)}$
とする。$K_0=K$とし、$K_{i+1}$を$K_i$上の
$f_k^{(λ_i)}$の根体とする。
根体の定義によって
$K_{i+1}=K_i(θ_i),f_k^{(λ_i)}(θ_i)=0$
が成り立つ。$θ_1,…,θ_p \in K_p$であり、
②に代入すると
$1=0$
となって矛盾が生じる。
(証明終) -
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まげ店長 (magemanager@mathtod.online)'s status on Saturday, 14-Jan-2023 11:14:40 JST まげ店長 #類体論へ至る道
補題2
$R$を環とし、
$\mathfrak{A}$を$R$の固有イデアルとすると、
$\mathfrak{A}\subset \mathfrak{M}$
なる$R$の極大イデアル$\mathfrak{M}$が存在する。
(証明)
$X$を$\mathfrak{A}\subset \mathfrak{B}$なる固有イデアル$\mathfrak{B}$のなす集合とする。
$X=\{\mathfrak{B}|\mathfrak{A}\subset \mathfrak{B} \neq R\}$
$(\mathfrak{B}$は$R$のイデアル$)$$X$は包含関係によって順序集合を成す。
$Y( \neq 0)$を$X$の全順序部分集合とする。
$\mathfrak{C}=\cup _{\mathfrak{B} \in Y}\mathfrak{B}$
と定義すると、$\mathfrak{C}$は固有イデアルである事を示す。 -
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まげ店長 (magemanager@mathtod.online)'s status on Saturday, 14-Jan-2023 11:15:21 JST まげ店長 #類体論へ至る道
$a,b \in \mathfrak{C}$ならば和集合の定義によって
$a \in \mathfrak{B}_1,b \in \mathfrak{B}_2 \in Y$
が存在する。
$Y$は包含関係に関する
全順序集合なので、例えば
$\mathfrak{B}_1\subset \mathfrak{B}_2$
と仮定して良い。
つまり$a,b \in \mathfrak{B}_2$である。
$\mathfrak{B}_2$はイデアルなので
$a+b \in \mathfrak{B}_2\subset \mathfrak{C}$
$ra \in \mathfrak{B}_2\subset \mathfrak{C}$
$(∀r \in R)$
が成り立つ。
よって$\mathfrak{C}$はイデアル。 -
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まげ店長 (magemanager@mathtod.online)'s status on Saturday, 14-Jan-2023 11:15:59 JST まげ店長 #類体論へ至る道
$1 \in \mathfrak{C}$と仮定すると
$1 \in \mathfrak{B}$
なる
$\mathfrak{B} \in Y$
が存在することになって矛盾するから
$1\not \in \mathfrak{C}$
である。
つまり$\mathfrak{C}$は$R$の固有イデアルである。
$∴\mathfrak{C} \in X$
しかも任意の$\mathfrak{B} \in Y$に対して
$\mathfrak{B}\subset \mathfrak{C}$
が成り立つ。すなわち$\mathfrak{C}$は$Y$の上界である。
故に$X$は帰納的順序集合である。
したがってツォルンの補題によって
$X$は極大元を有する筈である。
それを$\mathfrak{M}$とする。
$\mathfrak{M}$は明らかに求める性質を持つ
固有のイデアルである。
(証明終)
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