核廃棄物や、除染土再利用について、「国民全体で考える必要がある」という啓発型の論調に対して、私が賛成しないのは、国民全体が関心を持ったとしても、利害の対立が鮮明化するだけで、問題はそこではないだろう、と思うからです。
プロセスをどのように導いていくかという戦略が最重要なのであり、それを考える重要性そのものを日本政府も統治機構も理解できていないのに、国民全体の理解を高めたとしても、なにも進むことはないのは目に見えていると思います。
核廃棄物や、除染土再利用について、「国民全体で考える必要がある」という啓発型の論調に対して、私が賛成しないのは、国民全体が関心を持ったとしても、利害の対立が鮮明化するだけで、問題はそこではないだろう、と思うからです。
プロセスをどのように導いていくかという戦略が最重要なのであり、それを考える重要性そのものを日本政府も統治機構も理解できていないのに、国民全体の理解を高めたとしても、なにも進むことはないのは目に見えていると思います。
ノア・スミスがサブスタックで、アメリカの制度への信頼の低下と精神疾患の増加が、ソーシャルメディア、特にフェイスブックとXの広まった時期と一致している、という記事を書いています。
先日の「福島季評」で、以下のように書きましたが、同じ観点からの話だと思います。
「ソーシャルメディアの普及は、被災地と外社会の緩衝帯となっていた地理的な距離を消滅させ、質的に異なるふたつの社会を直接結びつけてしまった。」
異なる意見の人間が集団で生きる時に、妥協点を探るというのは、かなりコストのかかる作業であるため、それが必要となる場面以外は、「距離を取る」というのが、もっとも低コストで、かつ軋轢も少ない対応方法でした。
ソーシャルメディアは、それを不可能にしてしまった。
人類には、使いこなすことがそもそも不向きなツールである、というのが、私のだいぶ前からの結論です。
Social media destroyed one of America's key advantages
https://www.noahpinion.blog/p/social-media-destroyed-one-of-americas
地道にやっていれば、それなりにしっかりした成果は出せたはずなのに、浮かれ上がって、おおよそ身に添っていない「世界に冠たる!!」とか集団でいいだして、すべてを台無しにしてしまう、日本の既得権益おじ(い)さんたちの発想パターンは、まるっきり理解できませんが、これが泥沼の日中戦争から太平洋戦争で、何百万の死者を出しながらも「国体護持」と唱え続け、敗戦に至るプロセスそのままなんだろうな、ということはよくわかりました。
アメリカからの(亡命)研究者の受け入れに多くが乗り出そうとするこの時期に、まったくその組織のなかに名前が上がらないところからも、エフレイの置かれているポジションはわかるのですが、福島県知事方面が「世界に冠たる!!」と言って譲らないので、「世界水準の研究拠点」と言い張らざるをえないのでしょうね。
「また、日本を代表する世界水準の研究拠点をつくるとして、国が福島県浪江町に約1千億円をかけて整備している「福島国際研究教育機構(エフレイ)」については、30年度を目指している施設の完成を「可能な限りの前倒しを図る」とした。」
震災復興事業費「1.9兆円程度」 26年度から5年間の政府方針案
https://www.asahi.com/articles/AST6F3HVPT6FUTIL024M.html
24時間無料で読めるようにしました。
いわき信用組合のこの記事、地方がどのようにして衰退していくのかが、端的によく描かれていると思います。
あらゆることを人間性ともともとの人間関係で回収してしまい、自浄能力が発揮できないまま、ずるずると停滞、凋落していく地方の組織の様子が見えていると思います。
同じ構図は、福島復興シーンでも常態化していますから、福島県庁や、イノベ機構、県立医大、その他復興関係の組織をまわってみるといいと思います。
事態の深刻さをまるで理解できていない、ぬるい雰囲気に背筋が寒くなると思います。
「「つきあいは半世紀。何度も融資を受けており、昔は支店長とも酒を飲んだ。いわ信は身内のような感覚だ。不正は当時の経営陣の問題なので、今の役員を責めても仕方ない。『うみを出し切って頑張れ』と言いたい」」
不正融資のいわき信組、新理事長は前経理部長 預金は103億円減少
https://digital.asahi.com/articles/AST6F3CDPT6FUGTB00KM.html?ptoken=01JXNX9E1N9F4QGJS77KXXPFHC
昨日、新しい理事会が選出されたいわき信用組合問題、朝日新聞の続報が光っています。
ほかは、公式発表にコメントを加える程度の解説しかないので、取材をしていると、こういう情報が出せるという違いがよくわかります。
不正融資の金が現金で管理されていたということは、ほぼ100%の確率で、さらなる不祥事が出てくるでしょうし、新しい生え抜きの理事長は、適切に対応できないので(そもそも、こういう場合どうすれば「適切な」対応なのか自体がわからないはず)、ここで体制を一新して全部入れ替えておけばまだ存続できたものを、ずるずると経営継続が不可能な状況に追い込まれていく、という形になるのではと思います。
活力のなくなった地方というのは、どこもこういう末路を辿る、という例になるように思います。
そして、これは福島復興政策の行き着く末と重なって見えます。
「複数の信組関係者によると、不正融資の一部は職員によって店舗で現金でおろされていた。現金は本店幹部が管理し、不正融資の際に使う顧客の名前が書かれた印章と一緒に、本店内で保管していたという。」
不正融資の一部、現金で本店で保管か いわき信組、使途不明の温床に
https://www.asahi.com/articles/AST6F347NT6FUTIL023M.html
ちなみに、日本の核兵器武装ですが、私は、原子力発電所のガバナンスのあり方を見ていて、日本では、核兵器開発・所有は、ガバナンス的に不可能、と結論を出しています。
原子力発電もそうですが、こもっとも重厚な垂直統合型のがバンスが必要とされる技術ですが、日本の統治メカニズムは、その前提が備わっておらず、どのように足掻いても、中途半端な「分散」ともいえない、三々五々のものにならざるを得ないからです。
おおよそ意思決定が満足に行えないこの統治メカニズムのなかで、現状、原子力発電の技術を保持し得ているのは、平和利用に徹していることもありますが、ガバナンス的に見えれば、神業に近い、奇跡的なものと思っています。
エレミヤ書を読み返したくなりました。
ひとつの文明が滅びるのは、社会が大きな腐敗に覆われた時期に、とんでもなく愚かな支配者が現れ、それを誰も押し留めることができなかった時、と寓話的には描かれるのですが、その状況に酷似しているように見えます。
その1000000分の一くらいの規模ですが、福島復興シーンも似たようなものです。
ネタニヤフは、国内での延命のために、トランプの反対を押し切って今回の攻撃を実施したようですが(攻撃後のテレビ演説で妙にアメリカに気を遣っているし、自信がなさそうにも見えた)、これまでのイスラエルと中東諸国との緊張関係のなかで、事態を破滅的に悪化させないようにギリギリのバランスをとりながら攻撃対象や範囲、攻撃手段を選んでいた交戦とは大きく異なり、偶発的とまでは言わないものの、大きな戦略があった上でのものではないように見えますし、近い将来の核兵器使用は、もはやその前提で動いていた方がいいと考える程度には、現実味を帯びてきたように思います。
イアン・ブレマーのイスラエルのイラン攻撃の解説を聞いていたら、今回、イスラエルが攻撃したイランの核施設のほかにも、攻撃が不可能な地下深くに核開発拠点がある、と言っており、イスラエルはイランの核を完全無力化する見込みもなく、核施設攻撃に踏み切っていることに呆然としました。
ブレマーも、この後、イランが残った施設で核開発を急ぎ、核兵器使用する危険性を、今後の可能性の高い第一シナリオにあげていましたが、普通に考えれば、そうなると思います。
この状況を見れば、ほかの核兵器を国家存立の最終カードとして保持している北朝鮮や、それ以外の国もさらに核兵器を強化する方向に動くでしょうし、他国でも核武装に走るところは増えるのではと思います。
Israel strikes Iran: Could the US and Gulf States be pulled in?
https://www.gzeromedia.com/quick-take/israel-strikes-iran-could-the-us-and-gulf-states-be-pulled-in
トランプ政権は原子力発電の再活用のために、規制を大幅緩和する大統領も出ているのですが、NRCもCDCレベルでスタッフが入れ替えられそうな大統領令が出ています。
ただ、現実的にアメリカに、トランプ政権が大号令をかけるほどの速さで、原子力発電所を作る技術力は存在しないと思いますし、ましてや、移民労働者を追い返すのならなおさらでしょう。
安全審査の期間をその上期限を区切って行えば、見切り発車となり、事故が起きるリスクも飛躍的にますと考えられます。
トランプ氏が原発活用促進の大統領令 規制審査緩和で安全性の懸念も
https://www.asahi.com/articles/AST5S006HT5SUHBI006M.html
トランプ政権、原子力発電の規制緩和 AI電力需要に備え
トランプ政権
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN23DQB0T20C25A5000000/
福島復興政策の失敗は、それだけの規模の事業と予算を管理する能力のない国と自治体に、巨費を動かさせたことに尽きると思います。
巨額プロジェクトをマネジメントするには、それなりの準備と体制が必要であるにもかかわらず、そうしたものを一切用意しないまま、ダラダラと何十兆円も流し続ければ、金・名声・権限・ポストに吸い寄せられる人間ばかりができあがるに決まっています。
そういう意味で、まさに、日本の戦後を締めくくる「第二の敗戦」と呼ぶにふさわしい結末であろうと思います。
そして、除染土再利用や帰還困難区域でも、裸の王様たちが意気揚々と、国費を浪費して、自分たちの一存で、すべてがうまくいくと信じ込んで突き進もうとしているわけです。
いわき信用組合で驚愕している方も多いようですが、福島復興政策の愚かさはあんなものではありません。237億円よりも、桁が3つ多いのですから、愚かさもさらに3つ桁が大きい規模と思っていただいてまちがいではないと思います。
毎回こんなやり方をしていたら、どんな豊かな国だって、あっというまに破綻します。
そんなことさえ思いも及ばず、「うまいことやった」と信じ込んで、浮かれ上がっているのですから、イソップ物語に出てくる、どんな愚かな王様よりも、さらに輪をかけて愚か、としか言いようがないです。
しみじみと自民党と福島県知事・県庁の愚かさには、恐れ入るのですが、福島県知事と福島県庁が、処理水放出のために、国よりも熱心に、先頭に立って県民の口を塞ぎ、処理水放出が確実に実行されるように動いていたことは、知る人ぞ知る公然の事実なのですが、それはともかくとして、処理水放出は、とてつもない公費を投入しており、公共政策のコストベネフィットで考えたときに、ありえないものになっています。
早めにきちんと合意を取る手続きをとっておけば、時間はかかっても、この十分の一程度のコストで済んだし、おそらくは社会的な信頼も回復でき、新しい社会のあり方としてもよいモデルが提示できたのではと思います。
それなのに、IAEAの神頼みでうまくいったものと信じ込んで、自分たちは成功した!この先もこれで行こう!と盛り上がってしまっているんですから、すくいようがないです。
何度も言っていますが、IAEAではなく、ギリギリのタイミングで漁業者と協議を始めたから、この程度の損害で済んだんです。あれをやらないまま突っ込んでいたら、とんでもない事態になっていました。
ということさえ、いまだに気づいていないんですから、救いようがないです。
いわき信用組合の第三者委員会の調査報告書が今日発表になりますが、さらにびっくりする話が出てくるかもしれませんね。
金融機関が特殊詐欺グループと同じ感覚なのですから、なんでもやりたい放題で、どこまでなにをしていたかさえ、自分たちでも全体を把握していなかった可能性が高いのではないでしょうか。
「元会計検査院官房審議官の星野昌季弁護士の話 信組が管理口座を偽造し、資金を流用していたという点では、特殊詐欺グループと同じような不正を金融機関が組織的にやっていたことになり、前代未聞だ。リスクの高い復興事業などへの公的資金の投入には、不正のリスクも少なくないことは経験則上明らかで、金融庁は、何に使われるのか関心をもって確認し、定期的なモニタリング以外にも抜き打ちの特別監査をするべきだった。」
印鑑証明、「平然と」省略 いわき信組架空融資、識者「詐欺と同じ」
https://www.asahi.com/articles/AST5Y3FZWT5YUTIL00YM.html
海外の支援活動ですでにかなり前から大きな問題として指摘されていることですが、既存の社会システムそのまま支援金を流すと、もともとの社会の不平等がさらに強化され、支配構造の力を持つ人はますます力を持ち、力のない人はさらに力がない側に追いやられる、という悪効果をもたらします。
支援する側は、往々にして、支援をした自分たちアピールができればそれで仕事をしたことにできるので、現地の社会構造が支援によってさらに不平等化が進み、生きづらくなっていることを見ようともしないで、復興の恩恵を受ける地元層とだけ関係を結び、しばしば、彼らとの関係を、善良な支援者としての役割を果たしているという宣伝に用いる、というところも福島も共通していると思います。
いわき信用組合の架空融資の話をリアルですると、かなりの頻度で「3、40年前ならわかるけど、今もやっているのは驚き」というコメントが出てくるのですが、これが核心なんだろうと思います。
時代に置いて行かれた古い感覚のままの地方の政財界実力者たちがいつまでもその時代錯誤さに気づかず、3−40年前の感覚のままやり続けているから、コンプライアンスという概念もなければ、ジェンダーバランスもないし、時代に合わせた新しいビジネスのあり方もない。
福島の場合、復興予算の投入によって、その構造がさらに温存・強化されてしまったことに加え、こうした時代錯誤の体質に親和的な人ばかりが吸い寄せられるように残ってしまった、というところが、特殊なのかもしれません。
バブル時代の感覚のままの経営者が幅を聞かせている組織では、どこでもありうる話が、福島では復興予算によって極端なまでにデフォルメされている、というところかなと思います。
サイトを見たら、日本財団の笹川陽平さんが支援者に乗っていたりしますし、もともと、そういう団体なんでしょう。
こういうボランティア系の団体は、まじめにやっているところは、どこも例外なく資金繰りに苦労していますが、個人的な感覚では、脈絡なく有名人のリストをずらっと支援者で並べてるところは、疑ってかかっていいと思います。
きちんとしたところは、仮に支援者のリストをかかげるとしていても、団体の活動との関連性がわかるようなリストになっていると思います。
「トー横キッズなどからの悩みの相談を受ける公益社団法人「日本駆け込み寺」で事務局長を務める男」がコカイン所持で逮捕されただけでなく、相談者の女性(未成年でしょう)に、使用を勧めていたというだけでも、ひどい話ですが、これは、オンナ叩きでCollaboが追い出された後に、男社会が代わりとして「ふさわしい」と認めた団体であった、というところがさらに救いがないところです。
「逮捕された女は「日本駆け込み寺」の相談者で、警視庁は田中容疑者が女に薬物の使用を勧めたとみて調べています。」
コカイン所持か「日本駆け込み寺」事務局長を逮捕
https://news.yahoo.co.jp/articles/8b11aa8530ba156bd5f332bca28b52d9bdb70e0a
作家/NPO福島ダイアログ理事長/博士課程後期在学中注:このアカウントは少々騒がしめです。物静かなトーンをお好みの方は、 Blueskyアカウントフォローをお勧めします。https://bsky.app/profile/ryokoando.bsky.social 原子力災害後の復興政策と地域住民のギャップを埋めるためのローカルプロジェクトの意義と重要性について研究する予定。・著書『海を撃つ』(みすず書房) 『スティーブ&ボニー』(晶文社) 『末続アトラス2011-2020』(福島のエートス)寄稿や講演・講義のご依頼承ります。業績については、researchmapをご覧ください。連絡先:スパム予防で全角にしてあります。全体を半角英字に、(@)→@に置き換えてご送付ください。 ryoko_ando(@)me.com
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