『…永住資格取り消し規定は急に浮上したものだ。人権上の問題が多い外国人の技能実習制度に代わり、育成就労制度の導入が検討された。有識者会議が議論し、入管法改正に向けた作業が進められた。会議で永住資格取り消しは議論されなかったが、育成就労を通じて永住者が増えることを警戒する自民党の意向を反映し、最終的に改正入管法に取り消し規定が盛り込まれた。
法務省は「取り消しは故意の滞納など悪質なケースだけ。普通に暮らす永住外国人は対象外」と説明するが、「故意」や「悪質」が恣意(しい)的に運用されない保証はない。滞納などがあれば従来通り、差し押さえや訴訟による対応が可能だ。外国人にだけ厳しい措置を取る合理的理由はない。
日本で永住者の資格を得るには、原則10年の滞在や十分な収入など諸条件をクリアすることが必要で、諸外国よりハードルが高いとされる。永住者はいずれも多大な努力と決意の上で、厳格な審査を経て永住資格を取得していることもふまえるべきだ。
法改正後の6月、国連人種差別撤廃委員会は「永住者の人権に不均衡な影響を及ぼす」と懸念する緊急書簡を日本政府に送付。政府は9月、「差別的な影響を及ぼすことは全くない」と回答した。
日本の経済的な地位が年々後退する中で、人権面でも劣った国と見られかねない。今回の法改正は、幅広い年代やさまざまな歴史的経緯を持つ永住者から安心と希望を奪い、国際社会から信頼を失うものではないだろうか。』