日本の戦争指導に対する責任を問う研究で、もはや古典といえるのが藤原彰先生の『飢死した英霊たち』です(最近文庫化したんですね)。こういった研究に、やれ「自虐史観だ」「日本人のくせに日本が嫌いなのか」といった声は絶えませんが、愛すればこそ批判もするのです。
で、藤原彰先生はまさに「戦う歴史学者」でした。というのも、戦時中は将校として大陸打通作戦に参加し、みずから先頭に立って突撃して負傷されています。その経験が戦後、日本の軍事史研究に藤原先生を向かわせたといってもいいでしょう。
日本の戦争指導に対する責任を問う研究で、もはや古典といえるのが藤原彰先生の『飢死した英霊たち』です(最近文庫化したんですね)。こういった研究に、やれ「自虐史観だ」「日本人のくせに日本が嫌いなのか」といった声は絶えませんが、愛すればこそ批判もするのです。
で、藤原彰先生はまさに「戦う歴史学者」でした。というのも、戦時中は将校として大陸打通作戦に参加し、みずから先頭に立って突撃して負傷されています。その経験が戦後、日本の軍事史研究に藤原先生を向かわせたといってもいいでしょう。
まさに戦争に参加した「戦う歴史学者」といえば、世界史学史上もっとも偉大な例は、フランスのマルク・ブロックでしょう。アナール派の創設者の一人として名高いブロックは、第二次大戦中ナチへのレジスタンスに参加し、最後は逮捕されて銃殺されます。
ブロックの盟友だったリュシアン・フェーヴルが書いた歴史論で、ブロックとの回想も綴られた本のタイトルは、まさに『歴史のための闘い』です。その情熱には、今読んでも圧倒されるものがあります。
平山先生の「戦う歴史学者」の売り文句はポニーキャニオンが考えたものでしょうが、率直なところ、マルク・ブロックや藤原彰をはじめとする偉大な先人のことを考えると、安易に名乗れる称号ではないと思わざるを得ません。実際やってることがドラマのアンチとのネットバトルでは……。
私のような三流の下っ端研究者で、あんまり論争にならなさそうな(マニアは多い)鉄道史という長閑そうな分野をやっていても、「日本は植民地にいいことした、鉄道敷いた」といった妄言には反論せざるを得ず、戦わざるを得ない状況に置かれているといえ、それを思うといささかその称号は考え直した方がいいのではと思うのです。
いまツイッターで、歴史学―のみならず倫理の問題にも通じると思うのですが―のためにもっとも戦っておられる日本の歴史学者は、間違いなく田野大輔先生です。小野寺拓也先生との共著『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』を世に問い、危険な相対主義と戦っておられます。
田野先生のTLを一瞥すれば、同書出版から半年近く経った今も、「ナチスを絶対悪と決めつけるのは一面的だ」というような、相対主義をはき違えたポストモダンの鬼っ子たちと日々戦っておられるのが分かります。次々デマ潰しに駆け回る田野先生は「火消し屋モーデル」を彷彿とさせます。
私など面倒くさがりなので、そういう連中は「悪とされるナチスすら『是々非々』で評価できる俺カッコイイ」という中二病でしょ、で終わらせてたくなるので、田野先生には頭が下がります。でも、まさに日本ネット界の中二病の伝説が「尊敬する人:ヒトラー」だったわけで。
田野先生のように「戦う歴史学者」といえば、歴史修正主義との闘いが映画になった、リップシュタットが今なら挙がるでしょう。ホロコースト否定論者のアーヴィングに完勝したけれど、莫大な訴訟費用が掛かり、支払いを命じられたアーヴィングは破産して踏み倒したとか。
歴史修正主義は世界にはびこっており、とりわけ権力者までそれに接近している日本では、その戦いは切迫したものです。そこで考えれば、日本学術会議任命拒否問題で権力に攻撃された歴史学者の加藤陽子先生もまた、権力者による歴史修正主義的策謀の犠牲者といえるのではないでしょうか。
加藤先生は任命拒否事件発生後、学術会議の連携会員になるという道も断られ、断固戦う姿勢を見せておいでです。仄聞するところでは、事態を後世に伝えるため、記録を丹念にとっておられるそうで、これこそ歴史学者の戦い方なのだと思います。
権力との闘いといえば、日本でもっとも著名なのは、教科書裁判の家永三郎先生でしょう。他にも、日本の戦争責任をめぐる歴史研究をされた先生方は、心ない世間の―時には権力者の―圧力と戦い続けてこなければならなかったのです。
昨夜最終回だった「どうする家康」、SNSを検索するとほとんど絶賛ばかりで溢れていて、正直違和感があります。昨年の『鎌倉殿の13人』のような、すごいものを見せられている……という緊張感がまるでなく、新しさを出そうとして滑ったような感が個人的にはあります。あと最終回の後半(鯉)は蛇足では。
ところで、そういった #どうする家康 の問題の多くは脚本と演出にあって、時代考証自体は最近の説も積極的に取り入れていたそうですが、ただ私の知り合いの間では「時代考証の平山優先生がツイッターで他の歴史家を攻撃したり、アンチを叩いてイキっているのは問題では」との指摘がありました。
私は平山優先生のことはよく存じ上げないのですが、呉座さんとかつてはツイッターの「中世史クラスタ」の一員だったかと思いますので、ネットの使い方には(人のこと言えませんが棚に上げて)正直懸念を覚えてしまいます。ああいうクラスタの存在が、呉座さんを誤らせた一因と思うので。
で、私が呆れたのは、平山先生が芸能事務所に所属したのはいいとして、その売り文句が「戦う歴史学者」だということです。いったい何と戦っているのでしょうか?率直に言って #どうする家康 の視聴率は不振ですが、まさか視聴率と戦ってるのですかといいたくもなります。
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