田野先生のように「戦う歴史学者」といえば、歴史修正主義との闘いが映画になった、リップシュタットが今なら挙がるでしょう。ホロコースト否定論者のアーヴィングに完勝したけれど、莫大な訴訟費用が掛かり、支払いを命じられたアーヴィングは破産して踏み倒したとか。
歴史修正主義は世界にはびこっており、とりわけ権力者までそれに接近している日本では、その戦いは切迫したものです。そこで考えれば、日本学術会議任命拒否問題で権力に攻撃された歴史学者の加藤陽子先生もまた、権力者による歴史修正主義的策謀の犠牲者といえるのではないでしょうか。
加藤先生は任命拒否事件発生後、学術会議の連携会員になるという道も断られ、断固戦う姿勢を見せておいでです。仄聞するところでは、事態を後世に伝えるため、記録を丹念にとっておられるそうで、これこそ歴史学者の戦い方なのだと思います。