映画『ティル』感想
1955年にエメット・ティルという14歳の黒人少年がミシシッピ州で白人に集団リンチに遭って殺害された事件を描く映画。昨今ありがちなトラウマ描写で観客を惹きつけるような見え透いたわざとらしさはなく、この事件の被害者に寄り添い、一緒に怒りと悲しみを共有し、社会に突きつけるという姿勢がこの映画にはあります。「白人のスペースを守る」「(白人の)女性や子どもを守る」という名目での正当化…今もかたちを変えてこの社会にあるレトリックです。
映画『ティル』感想
1955年にエメット・ティルという14歳の黒人少年がミシシッピ州で白人に集団リンチに遭って殺害された事件を描く映画。昨今ありがちなトラウマ描写で観客を惹きつけるような見え透いたわざとらしさはなく、この事件の被害者に寄り添い、一緒に怒りと悲しみを共有し、社会に突きつけるという姿勢がこの映画にはあります。「白人のスペースを守る」「(白人の)女性や子どもを守る」という名目での正当化…今もかたちを変えてこの社会にあるレトリックです。
日本では刊行中止になった反トランス本の余波が続いていますが、アメリカでは新しめの陰謀論が登場しています。それは「アダルトサイトをみた異性愛シスジェンダー男性がコンテンツによる催眠術のせいでトランスジェンダー女性に変えられている」というもの。右派コメンテーターのマイケル・ノウルズが堂々と解説しており、こちらの陰謀論も日本で広まったりするのでしょうか…
https://www.lgbtqnation.com/2023/12/rightwing-pundit-claims-popular-adult-website-is-converting-straight-men-with-secret-messages/
ハリウッドの脚本家&俳優ストライキは完全に終わりましたが、ストライキを決意した人・参加した人を尊敬します。労働環境の改善はとても大事なことです。もし今後もストライキが必要なら遠慮なく実行してください。そのときも必ず支持します。
最近では『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』にも出演して話題を集めた名俳優のロバート・デ・ニーロですが、現在、アシスタントの女性から虐待的扱いで訴えられて裁判の真最中です。どこの職場にでもあるような(あってはいけない)、極めて家父長的な女性スタッフへの扱いがあった事実(そしてそれをロバート・デ・ニーロ本人が些細なことだと思っている事実)が明らかになっています。以下の記事内(英語)は虐待の詳細な描写があるので注意してください。
https://www.themarysue.com/robert-de-niros-trial-offers-a-disturbing-look-at-how-women-are-treated-in-the-workplace/
人権は「賛否」を問うものじゃない。
人権は「価値観」ではない。
人権は「利益」ではない。
人権は「事実」であり、「現実」であり、「命と健康」の問題である。
このことだけは常に一貫していきたい。
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』感想
非当事者の私がだらだらと語るのもあれなので、ネイティブアメリカン当事者のコメントをたくさん引用しながらこの映画を整理しています。本当に先住民当事者は複雑な心境を抱えているので…。「面白くて3時間の映画でもあっという間に感じました」なんて気楽に言える人はそれでいいですが、もう少し考えてみましょう。とりあえずリリー・グラッドストーンには賞をあげてください。
アニメ『わたしの幸せな結婚』感想
和風「シンデレラ・ストーリー」なわけですが、抑圧的な環境下にいる女性の立場で心理的虐待をともなう家父長制からの脱却をメインでちゃんと描いているものの、結構コンサバティブなハッピーエンドに留まっているのでは?という視点の感想です。オチがどう転がるにしても帝国主義フェミニズムっぽいような…
『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』感想
差別は気にしなければいいと言う人もいますが、差別というものは向こうから土足であがりこんでくる。それがよくわかる映画です。2011年11月19日にニューヨークで実際に起きた衝撃的な実話を題材に、人種差別と障がい者差別の恐ろしさを目撃します。テクノロジーというものがもたらす恩恵は常に不平等であるという現実を突きつけられる映画でもあります。
👇 ネタバレあり
https://cinemandrake.com/killing-of-kenneth-chamberlain
『ハンサン 龍の出現』感想
16世紀の豊臣秀吉による朝鮮への侵攻の初期に起きた「閑山島海戦」を映画化。朝鮮と日本の双方の大将が互いを好敵手と認めながら、知略と戦術で緊迫感ある接戦を繰り広げる、ジャンル的に非常にツボを押さえています。めちゃくちゃロマンあふれるデザインをしている亀甲船を一番かっこよく描いた映画ですね。それに脇坂安治をここまで熱心に描く作品、日本でもあまり作ってないし…
イギリスにおけるアンケート調査の結果、反トランス感情を煽っているのは女性ではなくシス男性であることが示されたという海外記事。シス男性のほうがトランスジェンダーに嫌悪感と拒否感を持っていることをあらためて確認できます。
https://www.thepinknews.com/2023/08/15/uk-trans-men-women-data/
ジャニーズの件で「男性による男性への性加害行為」は注目されたけど、「女性による女性への性加害行為」も忘れてはいけないなと強く思う。たぶん最も軽視されやすい被害タイプでしょうし、社会的に罪に問われづらいケースでしょうから。
そして「男性による女性への性加害行為」でも「女性による男性への性加害行為」でも「男性による男性への性加害行為」でも「女性による女性への性加害行為」でも、はたまたノンバイナリーが関与しようとも、いずれにおいてもこれらは別個に生じているのではなく、全体としてレイプ・カルチャーというものを構成しているということ。
性暴力は「性別」だけがやたらと構造要素として強調されがちだけど、構造を成り立たせる要素のあくまでひとつにすぎない。性暴力を「性別」だけで語りすぎないようにするというのはなかなか難しいですけど、でも大切。「性的同意」という論点は、性暴力を「性別」ではなく「同意」という焦点に移し替えるという効果もあるのかなと思います。
「Barbenheimer(バーベンハイマー)」について、その発端と流行から炎上までを振り返る記事です。部分的にしかニュースで知らなかった人も、その始まりから余波まで押さえておけるように記録用に整理しました。ノーランの家出から、トムクルーズによる復縁、有害なインターネット・ミーム、インセルの便乗まで…。とくに有害なインターネット・ミームの問題は原爆だけでなく、今のSNS全体の問題なので自分事として受け止めないといけないですね。
https://cinemandrake.com/what-barbenheimer-japan
アニメ『江戸前エルフ』感想
あまりこういう作品を宗教的とは言わない傾向にある日本ですが、だからこそあえて今回はそこを掘り下げて感想を…。具体的には「神道」と「オタクウォッシング」の関連についてです。神道の政治的な保守性がオタクのイメージでふんわりと誤魔化されているという話。「オクシデンタリズム(西洋崇拝)」なキャラクターによる「日本ってスゴイ!」論法との重なりも言及しています。
ドラマ『デッドロック 女刑事の事件簿』感想
実際にクィア・フレンドリーな地として知られるタスマニア。その架空の町を舞台にした犯罪刑事ドラマ。レズビアン移住者の多い町で、なぜか男性が連続で殺害される事件が勃発。ジェンダーのステレオタイプな認識がひっくり返されていく展開がスリルたっぷり。キャラクターも魅力的で、2023年の最高なクィアなドラマの一本なのは間違いないでしょう。とてもオススメです。
「生理用品を男性が手にすること」をなぜそんなに世間の一部は毛嫌いするのか。結局は生理を汚らわしいものとみなす悪しき文化の名残でしかないと思う。つまり「生理用品は女だけが隠し持っておくべきだ(男が目にするものではない)」というのは家父長的な考え方に他ならない。
「生理用品を男性が手にすること」が気軽に実現できる世界は良いことです。何よりも生理に対する偏見を無くす一歩になります。生理用品を見たことも触れたこともない男性が生理を理解するのは難しいでしょう。トランスジェンダー男性やノンバイナリーの人々にも生理用品を平等に届けられます。子どもの娘を抱える父親(とくにシングルファーザー)の人にも安心です。カノジョが体調を崩したとき、生理用品を普通に手に入れてこれるカレシがいるのも、ステキな関係です。世の中の生理用品に対するタブー意識は早急に改善されるべきです。
「Barbenheimer」の件で日米の原爆への認識の差が浮き彫りになったと言うけど、私は日本も一般層においては核兵器に関するリテラシーや意識はそんなにないと思ってる。日本は原爆投下の歴史は確かに学校で学ぶ。しかしその悲惨さを見せるというトラウマ的な体験に終始することも多い(子どもにこういうトラウマ型の教育をするのはこれはこれで問題だと思う)。大切なのは「過去にこんな酷い目に遭いました」ではなく「今そして未来、どうやって核兵器のない世界を作ればいいのか」というビジョン型の教育のはずだけど、今の日本政府があんな体たらくなのでそこまで教育を段階アップできていない。今回の騒動を前向きに捉えるなら、あらためて核兵器について日本以外の歴史や現在の国際情勢などを学ぶ機会にしてほしい。「私は日本人だからアメリカ人よりも核兵器について理解が深い」なんて自惚れてしまう前に学ぶべきことはいっぱいある。
アニメ『パインコーン&ポニー』感想
史上最も無害でキュートな「馬上槍」です。そんな可愛いアニメシリーズはどうですか。キッズ向けアニメですが、主人公のプリンセス像はどこよりも先進的だと思います。クィア、人種、ディザビリティ…自然に目に入る多彩なレプリゼンテーションも魅力です。クリエイターの細やかな包括的イマジネーションによって、子どもに居心地の良さを与える、まさに2020年代に求められるキッズ向けアニメシリーズでした。
とくにトランス女性のホルモン療法について、「ホルモン療法が自死につながる」といった事実無根の主張の背景には、おそらく「女性というのは本質的に病弱である」「だからホルモンで女性化すれば精神的に弱い存在になってしまう」みたいな、女性蔑視的な先入観がこびりついているのも理由にあるのだろうと思う。これもまたトランスジェンダー差別と女性差別の複合事例なのでしょう。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_64b8949de4b093f07cb2d76c
こんな今だからこそ、トランスジェンダー&アセクシュアル・アロマンティックのアーティストである「cavetown」の曲『talk to me』をオススメします。
「世界を救うためにヒーローになる必要はない。自分を愛してもナルシストになるわけではない。何事でも簡単ではないと感じる。大丈夫。私に話してみて」
https://youtu.be/eIhU8wBjtsc
スタジオジブリ作品が好きな人も、1作も観たことがない人も、たまにはクィアな視点で語ってみるのはどうですか? メディアなどを参考に、海外のLGBTQコミュニティが考える「最もクィアなスタジオジブリ作品」は何かをざっくりとまとめてみました。皆さんのオススメのクィアなジブリも教えてください!🏳️🌈
https://cinemandrake.com/studio-ghibli-lgbtq
writer / activist / #アセクシュアル ace #アロマンティック aro #ノンバイナリー enby / 映画の感想をしゃべったり。詳しい感想はサイトで。「mastodon.lol」→「mastodon.social」へ引っ越ししました。
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