朱喜哲さん解説の『100分de名著 ローティ「偶然性・アイロニー・連帯」 』のNHKテキストを非常に面白く読んだのだが、人権批判に関しては補足意見が必要と考え、以下に記す。
「言葉はすべて歴史的な偶然性による」 「言葉で本質に到達することはできない(形而上学の否定)」という立場から、ローティは「人権」という形而上学的な概念を強調することは、むしろ「非-人間化された人々の虐殺につながる言葉を生み出しかねない」と批判する。現実のジェノサイドの前には対象を言葉により非-人間化するプロセスが伴う。
ところで、このローティの講演が掲載されている書籍、『人権について オックスフォード・アムネスティ・レクチャーズ』(みすず書房)には、哲学的な見地からの人権への再検討の講演が複数収録されている。この書籍そのものは哲学の専門書としてまともな本である。
しかし、私たちの社会には罠がある。『反「人権」宣言』( 八木 秀次、 ちくま新書 298)という本では、「人権はダメだ」という主張の権威付けとして、オックスフォード・アムネスティ・レクチャーズの人権批判を(非常に乱暴な形で)紹介する。
この八木秀次氏は統一教会に親しい論客としてよく知られている。自民党の会合にもよく呼ばれている人物である。
(続く