私は中国人虐殺に関する文献をもっぱら読んでいて、朝鮮人虐殺はそれほど詳しくは無い自覚があるが、大川常吉の美談・偉業には多分に誇張が含まれている事は知っている。保護した事は事実だが群集の前での大演説も井戸水を飲んで見せたという事も事実ではないはずだし鶴見でも虐殺が発生しているはず。
ビールと中国醤油の瓶を持った中国人が連行されてきてそのビールと中国醤油を呑んで見せたという事実は存在しているが、井戸水が入った瓶を呑んで見せたという事も井戸水を汲んで来させて呑んだという事も存在しない。
また、群集が取り囲んだ事実だが、群集を前に大演説を行った事実は存在しない。これは9月3日に大川が警官8名を総持寺に派遣してそこに避難している朝鮮人を警察署に移送してきたタイミングでの出来事。移送には在郷軍人会と青年団の警護がついていた。在郷軍人会と青年団が移送を手伝っていたとなると群集の暴走の可能性は分かるものがあるとは思う。
とはいえ群集は間違いなく朝鮮人の追放を要求していた。
大川は朝鮮人追放を要求する地元有力者(国・地方議員)を署内に招き説得をするが失敗し、この要求を一旦は受け入れ、朝鮮人達に避難先を考えるよう指示し朝鮮人達は寒川(千葉)に避難する事を決定、大川は「県当局と相談し安全が確保されたら実行する」としますが地元有力者は「明日の臨時町会で決定する」として一旦は解散します。
翌9月4日、臨時町会で大川は地元有力者を粘り強く説得します。「いまここから出したら殺されてしまう」と。
町会に集まった地元有力者には所謂不逞鮮人デマを信じて朝鮮人を危険視し追放を主張する者と警察署にデマを信じた群集が乱入し暴動が起こる事を危惧して朝鮮人を追放する事を主張する者が存在しました。
大川は「県当局の支援が得られる。なにかあったら県が支援に来る」というような説得を行い、警察署での暴動などが発生しないであろう事をもって一部の追放を主張した町議の説得に成功し、警察署内での保護の維持に成功します。
また、鶴見でも9月3日にも4日にも朝鮮人(十数名)も中国人(数名)虐殺されています。
或いは殺されなくとも悲惨な事件はある。
昨年数回記事にもなっている話の中国人と結婚し家庭を作るも、中国人のパートナーが青年団のリンチに遭い瀕死の重傷を負い生還するも重度の障害が残り家族で中国に帰国するも中国で困窮し最期は餓死する事になる「ネエサン」は中国人(陳善慶)とその日本人妻(氏名不詳)と子2人(中国人1人と日本人3人)の家族の事だが、彼らは鶴見潮田在住だった。
わたしは誇張した美談を流布する事で、当地でも起こっていた本来語るべき虐殺を後景化させてしまうのではないかと危惧します。