枕草子の最初の方に、定子が出産のために身を寄せた邸の主人(平生昌)が清少納言に言い寄ってきたのをけんもほろろにはねつけてバカにする、平生昌が兄の自慢話するのもこき下ろす、って段がある。
それを「おっさんに言い寄られたのを馬鹿にしてイヤな女だ」って言う人も複数回見たことある。
けどさ。これ、背景事情があるんよ。
この平生昌は、流罪になってた定子の兄伊周が京都にこっそり帰郷してたのを密告した奴なの。さらに平生昌の自慢の兄ってのは、中宮職の長官やったのに道長に睨まれたくないからって仮病使って辞任した人なんよ。
定子は出産に際して身を寄せる先がなくて、そんな男の家しか行くとこがなかったんよ。清少納言は身分低いおっさんやから馬鹿にしたんじゃなくて、この平生昌が大嫌いだっただけなの。
本文には書いてないけど、たいていの枕草子現代語訳で注釈に書いてあるよ、この背景事情。それ読みとばした人が表面的なやり取りだけ見て清少納言を「若い傲慢な女がおっさんを馬鹿にした」みたいに思うの、全然違うから。