この胡乱な雁琳の振舞は、「勝利条件」がずれていたとすれば理解できます。裁判の勝利条件は自分により有利な判決を勝ち取ることのはずですが、雁琳は違ったのです。訴訟を通じて、ネット上での自分のプレゼンスを維持強化することこそが彼の勝利条件であり、訴訟そのものの勝敗は度外視だったのです。
これは一定の成果を挙げたとみられます。雁琳のもとには取り巻きの慰藉コメントがつき、カンパも集まっています。敗訴による社会的名誉の損失も、経済的賠償の損害も、ネットで補填されているのです。だから裁判に負けても雁琳は行動を改めない可能性が高く、引き続き誹謗中傷を続ける恐れがあります。
これは恐るべきことです。ネットで徒党を組んで誹謗中傷され、やむなく訴訟に訴えて勝利しても、誹謗中傷をやめさせることができないのです。ネットの地獄のような病理の構造がここにあります。これは誹謗中傷する当人以上に、安全圏から投げ銭する取り巻きの道徳的頽廃がもたらすものです。