平静を装ってバスの外に目を向けると、たくさんの犬や猫ーー震災で飼い主を失った動物たちが遠巻きにこちらを凝視していた。犬も猫も体毛はぼろぼろで、体が極端に痩せている。まだらハゲとやり、あばらが浮き出た雑種犬が一匹、よろよろとバスに近づいてきた。その首には飼い主がはめただろう真っ赤な首輪があった。私が泊まっていた旅館のフロント前には、動物愛護団体が持ってきた餌が置かれている。その理由が飲み込めた。自分たちが20キロ圏内に入れないため、作業員に餌やりを託しているのだ。『ヤクザと原発 福島第一潜入期』鈴木智彦 #カンミ読書