→この本を読んでいると、「アメリカは中国がリベラルに変化することに期待し長く関与=協調路線を続けてきたが、裏切られた」というのが基本的な流れで、それは間違いではないのだが、ここには二つほど追加すべき要素があると思う。
第一に、アメリカはそれほど(いや全く)リベラルな国ではない、ということだ。トランプが殊更に「アメリカ・ファースト」などと叫び始めるずっと前から、アメリカはアメリカ・ファーストで、人権よりも平和よりも国益(と名付けられた経済的権益)をこそ重視してきた。このアメリカの手前勝手なわがまま外交とその帰結としての国際社会のありようが中国という国のありように大きな影響を与えただろう。中国の手前勝手さを考える上で、このようなアメリカの醜悪さに言及しないのは決定的な欠落だと思う。……まあ、これはもうほとんどこの分野の作法みたいなもんだから仕方ないかもだけど。
もう一つは、資本主義という要素。少なくとも国の政策文書としては「地域の安定」「平和」が目標として書かれるわけだが、戦争によって利益を得る勢力が明らかに存在し政策に影響を与えている以上、これを考慮に入れないのも大きな欠落だろう。→