中村さんのゴール後のインタビューでは、自分は北海道から下見もせずにやってきて、一気に日本アルプスを歩けるオトクなイベントとして参加したのである、と述べていた。これはウェブの自己紹介の文章でも述べていることと同じなのだが、私はその自己紹介文を日本にありがちな韜晦である、と勝手に読んでいた。
しかし、マジだったのである。つまり、なるべく速くゴールに辿りつく、ではなく、8日間をフルに使って日本アルプスを一気に楽しむ、というまったく別の価値観で実に計画的に行動していたのだ。暗くなったら寝る、朝1時頃起きて行動開始、しっかり寝ながら8日間でゴールに着くように移動していた、とのことで、これは私は意識しておらず「中村さん、またうごいていないなー」、ぐらいにしか考えていなかった。短時間睡眠を必要に応じて昼夜を問わずゲリラ的にとる他の方々の行動パターンとはあまりにちがい、より普通の登山、あるいは日常に近い行動である。異常な中の普通さに私が気が付かなかっただけなのであった。