本来は、消費者はお金を使うことで幸福を手に入れます。同じ幸福なら安い金額で、同じ金額ならより多くの幸福を、の筈が、お金をこれだけつぎ込んだんだから自分は「幸福」な筈であると顛倒しているのが「推し活」です。その顛倒に対し、自分を自分で騙すために、SNSに消費を見せびらかすのです。
というわけで「推し」の問題については、消費者の歴史を辿ることが必須だと思うのですが、それにドンピシャの本が今月20日に出ます。北大の満薗勇先生(消費史研究の専門家)による中公新書『消費者と日本経済の歴史 高度成長から社会運動、推し活ブームまで』です。
「推し活」を超えて、焼畑商法でないコンテンツ産業を育てるには、まず消費者が主体性を奪回することが必須だと思います。その際の手引きに同書はなると期待しています。消費で自己実現するのは、簡単なようでいて実は容易ではなく、その難しさから逃げた先が推し活であり今のオタクだと思うのです。