この緊張感を持った対峙関係は、供給サイドもむしろ望んでいました。「流通革命」を推進したダイエーの中内功は、消費者も賢明な消費をすることで革命の一翼を担い、それによって日本の商品流通が合理化されることを夢見ました。そこでは消費者は、事業者と対等に渡り合う存在だったといえるのです。
ところが、おそらくは90年代以降ではないかと思いますが、この関係が変わります。安さを売りにしたダイエーは潰れ、定価販売のコンビニが隆盛を極めます。消費者は怠惰になったのか? 供給側が巧妙になったのか? 消費者が供給サイドに狎れあう傾向が生まれたように思われるのです。
そうした商略の行き着いた先が、消費者を囲い込んで盲目的に金を出させる「推し活」でしょう。消費者が供給者に依存する関係なのです。悪質なホスト商売や「頂き女子」は、その世相の極端な表現といえるでしょう。りりちゃんに貢いだ「おぢ」とガチャを回すオタクに軒輊する所はあるでしょうか。