さて、どこから整理しよう。まずは、抑止力概念の再検討が大事だろう。
抑止力というのは、相手が武力行使してきたときに、それに武力で対抗することで目的達成を許さない、それを予期させることで武力行使を思いとどまらせる、そういう力のことである。
抑止力そのものの効力を否定する議論もあるが、正直支持できない。ただ、少なくとも、現政権が考えるような「軍事的能力さえ高めれば抑止力も高まる」なんて単純なものではないことは押さえておく必要があるだろう。
たとえば、こちらがミサイル防衛システムを整えて相手の攻撃を無効化したら抑止力は高まるか。話はそう単純ではない。相手国から見れば、「こちらの攻撃は無力化されているなら、相手は躊躇いなく攻撃を開始できる」という状態になる。当然、躍起になって有効な攻撃手段を獲得しようとする。その結果、より防御困難な攻撃手段を相手国が手に入れる可能性が高い。大事なポイントは、防御的な兵器の配備ですら、かえって緊張を高め、抑止力を損ないうる、ということだ。