ジェンダーアイデンティティに関するジェンキンスさんの理論には自分自身の経験と照らしたうえでの不十分さを感じるのですが、けれど最終章でシス男性とトランス女性の社会化のされ方を同一視する主張に対して「アイデンティティの違いは社会化のされかたに影響しうるから、ともに周囲から男児と扱われていたからといってその点で同一視することはできない」みたいな議論を展開するときに、「単にそう思っているだけというのではなく、ジェンダー化された規範が織りなすこの世界での自分の位置付けの問題なのだ」というジェンダーアイデンティティ論が効いてきているのを見ると、「ああ、そういうことをやりたいのか」と納得がいくようにも感じました。