それにしても、ギンズバーグが道を切り開いたアメリカでさえ、いざ大統領選挙に女性が出るとガラスの天井に阻まれます。バイデンを「トランプでないというだけで大統領になった」と揶揄する表現がありますが、トランプこそ「男というだけで大統領になった」んじゃないかと思わざるを得ません。
トランプは男の中でも下劣の極みですが、「なのに」ヒラリーに勝ったのではなく、「だから」勝ったのかもしれないと思います。ギンズバーグのように立派な女性が理路整然と正論を唱えると、その正しさに嫉妬した人間が逆張りで下劣に攻撃したくなるのです。それに乗っかったのがトランプだった。
正しさへの嫉妬、それも「劣った」存在の筈の女の分際で、リロセーゼンと正しそうなことを言ってやがる、理屈でも倫理でも反論できないから、性差別のような下劣な攻撃で憂さを晴らす。デヴィッド・グレーバーが『ブルシット・ジョブ』で描いた「道徳羨望 moral envy」です。