日本軍の反乱の懸念というと、むしろポツダム宣言受諾を決めた際に、徹底抗戦派が勝手に戦争を続けはしないか、という方が懸念されており、実際に動きがありました(『日本のいちばん長い日』ですね)。でも逆の懸念、勝手に戦争止めないか、というのはないようなのです。
20世紀の大戦の特徴は、人類が途方もない規模で殺しあったというより、膨大な人がみずから進んで命を投げ出そうとしたことだ、とナショナリズム論の古典『想像の共同体』でアンダーソンは書いていますが、第一次大戦は命を投げ出そうとした人も我に返ることがあったのです。
しかし第二次大戦では、開戦時に前大戦のような「戦争熱」(志願ブーム)はなかったものの、戦況が絶望的になっても、命を投げ出すことをやめようとしなかった人が多かったのです。大戦間でナショナリズムが一層強固に教育されるようになったのか、それともイデオロギーのせいなのか。