“引き揚げ途上で八万人もの人びとが命を落とし、「日本という共同性」ゆえに、その間に女性たちは、ソ連兵のみならず、実は日本人からも強姦を受けたことの語りが封じられてきたこと、また引き揚げまで入植地にとどまった岐阜県黒川開拓団の場合には、ソ連兵向けの「接待所」を提供し、そこで強姦の犠牲に供せられたのは、「出征兵士の妻」ではなく「独身の女性」であったことが明らかにされている。
すなわち、そこには開拓団の男性幹部と出征兵士の間にホモソーシャリティ=「男性による女性の支配を前提とし、これを共有する男性間に生まれる連帯意識」が存在し、それにより女性内部にも分断がもたらされたのであった。
猪股祐介「コラム 満州移民女性と戦時性暴力」
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“三十五年にわたる植民地支配の間に日本への膨大な数が移動した朝鮮人は、五〇万人程度がそのまま残留することとなるが、日本人は朝鮮人を対等な存在=主体ではなく、動かされるべき客体としてしか認識しておらず、「多民族国家の戦前日本も、単一民族国家たろうとしてきた戦後日本も、朝鮮人について権利を持つ平等な主体として考えず自己の都合のいいように処遇しようという日本人中心主義的発想を持って接してきた点は変わりがな」かった。”
日本帝国と朝鮮人の移動―議論と政策 外村大
帝国崩壊とひとの再移動https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100033
第4章 引き直される境界 おきざりにされる人びと