戦争中店に入ってくる人々は、コーヒーを注文するちょうどよい言葉を見つけるのに難儀したのだという。「コーヒー」を指す言葉はクロアチア語とボスニア語とセルビア語でそれぞれ異なっていたため、それぞれの言語では他意のない言葉の選択も、険悪な政治的合意があるように受け取れられかねなかったのだそうだ。「トラブルを避けるためにですね」とウェイターは説明してくれた。「みんなエスプレッソを注文しはじめました。それなら中立なイタリアの言葉ですから。そして一夜にして、ここではコーヒーではなくエスプレッソのみを出すようになったんです」(p140)