さて、男は暴れて憂さを晴らすとしても、女性はどうでしょうか。そこで生まれるのが熱狂的な信仰なのだと思われます。通俗道徳に従って必死に必死に働いて、それでも生活は苦しくなるばかりで、その極地からついに神の声を聴いて大本教を創始した出口なおは、そのもっとも極端な例なのでしょう。
というわけで、通俗道徳の古典・安丸『日本の近代化と民衆思想』はオールタイムベストの本なので、広く読まれるべきと思います。須田『幕末社会』に登場する「強(したた)か者」の三浦命助も同書で取り上げられており、通俗道徳と社会変革のねじれた関係を学べます。