”私たちは、平和が生きのびられなくて戦争をおっぱじめるんじゃないか。やがて私はそう思い始めました。平和を生きのびることができるならば、もしも、経済問題も民族問題も賢く解決して、なんとか平和を生きのびることができるならば、たぶん戦争を起こさなくてもすむのではないか。体験を伝えるだけではとても戦争をふせぐことはできないだろう、と思い始めたのです。むしろ平和が生きのびられなくて、何か面白いことないかな、わくわくどきどきすることないかなって思い始めたら、いい景気刺激策はないかとか、そんなことを考え出したら、戦争ほど面白いものはないと思うんですね。戦争ほど私たちを興奮させ、戦争ほど「物語」の面白さを伝えられるものはないかもしれない。そして戦争ほど、ある人々にとっては商売になるものはないと思うんです。”
清水眞砂子『あいまいさを引きうけて』