”いまでも忘れられないのですが、あるとき学生たちが私の研究室で言いました。「先生、私たちは年輩の人たちがうらやましい。」って。「私たちは戦争を体験した人たちがとってもうらやましい。いいですね、あの人たちは」と彼女たちは言うんです。私はびっくりしまして、「なぜ?大変だったのよ」と言いました。そうしたら、学生たちは、言うんです。「戦争を体験した人たちは、自分たちの戦争体験を語るとき、すごく楽しそうじゃないですか。」って。「みんないろんなことをとてもいきいきと語っている。だけど、先生、私たちには語るものなんてないんですよ。」”
”こう言われて、私は学生たちからビンタを貼られたような気がしました。”
”若い人たちも今、現在、大変な状況を生きているんだということでした。平和を生きのびるということが、どれほど大変なことか。私たち大人は戦争を語り継がなければ、再び戦争になるんだと言ってきました。でも、私は学生たちにこう言われてから、この自明だと思っていたことを疑い始めました。”