先月、新人の方の作品の書評を書いたのだけれど、とても怖かった。
ご本人の預かり知らぬところで、編集部が依頼し、誰か(この場合はわたし)が書くのだが。書き手が自分の柔らかくて無防備な内面を開示して、大切なことを伝えてくれている作品に、〝評する〟立場から、無断で土足で侵入して踏み荒らすような怖さがあった。
これまではそんなふうに思ったことがなく、書評や解説、読書日記を自由に書いてきた。もちろん、作品と作者への敬意があるかを自己確認しつつではあったけれど。
評する側の一方的な〝権力〟の勾配を初めて自覚したのかもしれない。
小説でしか触れられないだろう、誰かの本質的な美しい部分に踏みこんでから、悪意を持って相手の心を壊すようなアプローチも可能なのだろうと思った。多くの評者がそんな酷いことをしないのは、ただ個人の良識のみにかかっているように感じて怖かったのかな?
考えた末、冷静な分析で書き終えたところを幾度も直し、なんというか、著者の方とフラットに向き合い、素直に自己開示しつつ寄り添うような書き方に変えて入稿した。ともかく先月のわたしの判断ではそうなった。
難しい。
引き続き考え続けていきたい。
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桜庭一樹 (sakurabakazuki@mstdn.jp)'s status on Thursday, 19-Jan-2023 00:24:57 JST桜庭一樹