帰り道、(いや、待てよ…)と首を捻り始めた。
問題のシーンの台詞だけなら、確かに多様な解釈ができるかもしれない。でも前後のさまざまなシーンとの整合性も取れているか?
それならなぜブランチはその後に破滅した?
そもそもスタンリーとブランチの力の均衡は全く対等じゃない。スタンリーは家長で労働者で家主の男性。ブランチは家を手放し失業もした居候の女性。もしブランチがスタンリーに対して感じた欲望があったとしたら、それは家父長制などを内面化し、自分の身を守るためのパフォーマンスというか、欲望と誤認する不安のようなものではないかと。もしそうなら、問題のシーンの後の破滅が理解できるし、〝欲望という名の電車に乗って…〟というタイトルの奥の怖さもよりわかるように感じた。
単に、立場の弱い側の女性も関係を望んでいた、だから性暴力じゃなかった、搾取もしていない、とすると、こぼれ落ちるものがあまりに重大すぎるのではないか。それに演劇は、そうやってまたもやなかったことにされてしまうもののほう、小さな声のほうを可視化させるべきでは。権力のある側に都合の良い言い分ではなくて。
と考え、悩みながら帰ってきた。
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桜庭一樹 (sakurabakazuki@mstdn.jp)'s status on Thursday, 19-Jan-2023 00:02:07 JST桜庭一樹