イギリスの舞台演出家フィリップ・ブリーン氏のトークイベントを聞いた。
例のテネシー・ウィリアムス作『欲望という名の電車』の話になった。氏は日本で大竹しのぶ主演で舞台化したことがあるという。「スタンリーが妻の姉ブランチを最後にレイプしたというのは間違いだ。原作にはそうは書かれていない。長年、舞台化されるときにそのように演出され続けたせいで、広く思い込まれている」「誤解の原因は〝男は暴力的だ〟〝女はヒステリーだ〟といった社会の偏見だ」「自分は問題のシーンでのブランチの(拒絶の)台詞をこのように解釈している。『あなたが私としたいと思っていることをしないで。私もしたいと思っているけれど。なぜならあなたは妹の夫だから』と」(わたしの記憶による要約です)
この下りを聞いて「え、書いてない?」と驚き、読み返さねばとその場でAmazonに注文した。
もし本当に、書かれていない犯罪が、演出家の解釈によって、さらに舞台を見た観客の解釈によって、書かれていたように広く信じられているなら恐ろしい。その理由が受け手の差別的な偏見であるなら、もっと恐い。
そう思って自分を疑って動揺したのだが(続)
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桜庭一樹 (sakurabakazuki@mstdn.jp)'s status on Thursday, 19-Jan-2023 00:02:08 JST桜庭一樹