四月三日(月)
日本人は戰爭に信仰をもっていた。日支事変いらい僕の周囲のインテリ層さえ、ことごとく戰爭論者であった。小汀利得君も、太田永福君(富士アイス専務)も、そうであった。事実、これに反対したものは、石橋湛山、馬場恒吾両君ぐらいのものではなかったかと思う。今後の戰爭は戰爭信者に対する何よりの実物教育であろう。だが、余りに高すぎる教育である。
この四月一日から百円の月給とりが、源泉課税を七円五十銭差引かれることになった。九十二円五十銭で、家族五、六人の生活をしなければならぬものはザラにある。砂糖一貫目百二十円は安いという時代に。戰爭というものが何を意味するかを納得することは、將來の日本のために大切である。