一端は査読という科学のシステムのいいところ、悪いところにも現れており、それがプレプリントという対抗手段で問題が前景化してきたのである。こうした変化の最前線では、たとえば最近eLifeという英国のジャーナルが、査読以前に論文掲載、というある意味革命的な編集方針の変更をした。科学における倫理が、社会と科学との関わりを超えて研究自体の公開の仕方にまで踏み込まれるようになった、そのトレンドの一部としてこのような変化がある。オープンソース、オープンレビューイング、といった、情報をすべてオープンにすれば問題は起きてもその詳細が明らかであり解決可能である、という立場は、良心的なしかし密室での査読を大前提とする立場とは思想的に異なる。査読は事前スクリーニングであり、プレプリントは事後的なスクリーニング、である。後者はスクリーニングというよりも、単に正邪を問わずすべてを公開することが第一であり、その後に世界がその存在位置を評価する、自然淘汰を待つ、という形式である。