当たり前のことだが、フランス革命の『革命的群衆』(G・ルフェーヴル)も、マスメディアに誘導される『孤独な群衆』(D・リースマン)も、古代社会には存在しなかった。にもかかわらず反革命論者は、革命で暴動を起こす群衆の姿をアテナイの民衆に投影し、また20世紀の評論家は、大衆社会の害毒をソクラテスの処刑とアテナイ民主政の衰亡に読み取ろうとした。人間は過去の中に見たいものを見、信じたいものを信じる」(p.234)