今年いちばんドン引きしたのは、今どき大真面目に「源義経=チンギスハン説」本を書いた謎のオッサンを、あの朝日新聞が肯定的に取り上げて記事にしてたこと。
「源義経=チンギスハン説」は単にトンデモだからダメなのではなく、「日本人(とりわけ天皇の末裔である源義経)が大陸の覇者になる」というストーリーの性質上、ファシズム前夜、大正時代あたりの日本でめっちゃバズり、結果として日本の満蒙侵略に向けた国民の戦意高揚に寄与した、ある種の危険思想だからである。
ちなみに日本では大正時代の前から、侵略行為を自己正当化するために、そのつどオカルト歴史論が持ち出されることが多かった。例えば江戸時代、蝦夷への侵略の際には「源義経がアイヌの王になった説」が、また明治時代の琉球侵略の際には「源為朝が琉球王になった説」が、それぞれ為政者により強調されている。
欧米の帝国主義国が侵略行為の正当化のために「キリスト教による文明化」との論理を用いたのに対し、日本では「昔の日本人スゴイ」的発想のオカルト歴史論が用いられたのであった。
(参考:『偽史冒険世界』長山靖生)