窓口で制度上の矛盾を指摘された時に役人がどうするかは、役所でどう対応が決まっているかによる。
矛盾を解決する方向での対応が決まっていれば、むろんそのようにする。問題はそういうことが規定または想定されていないとき。
規定されていない場合は、つまり、役所の方針としてその問題は無視することが決まっているので、来所者を素早く追い返すのが正しい対応になる。うまく言いくるめられればいいが、たいていの職員は中途半端に良心が残っているので、表情を消して「はあ、そうですか」とだけ言い、相手が根負けするのを待つ。
想定されていない問題を指摘された場合の対応は担当の良心による。上司と相談し、他の関連部署と協議して⋯というのが理想だが、それをやると「ひとりの来所者に時間を使いすぎる」とみなされ、人事評価が下がる恐れがある。自分が窓口を離れて協議に行けば、同僚の負担が増えて迷惑がかる。大半の職員はそれはやれない。僕は窓口対応を4年やったが、来所者の問題にとことん付き合い、納得のいく対応ができたのは、退職することを決めて上司に申し出たあとの2ヶ月間だけだった。