quicksandさんの >「回復とは、奪われていたり、あるいは自らも近寄ることをしなかった「他者の文脈」を自らに重ねるようになることだろう」
思い出したんだけど、平野啓一郎が『小説の読み方』でこう言っている。
「誰しも、自分の心は自分が一番良く知っているつもりでいる。しかし、だからといってそれで十分だというわけではなく、皆、映画を観たり、小説を読んだりと、その登場人物の人生に共感したいと感じている。他者の人生に仮託しながら、自分の中にある思いや感情を再発見し、言語化している。それは、他者を経由せずに自分で自分のことが分かっている、というのとは違う、大きな感動を伴なうことである」p.304
「ちょっとした心の動き、態度を通じて自分の感情を仮託することができるのが小説であり、その人を経由してもう一度自分に回帰するという、回路を体験できるのが小説なのである」p.305
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-90219-7