党議拘束(とうぎこうそく)とは、政党の決議によって所属議員の表決活動を拘束すること。政党規律(party discipline)という語も用いられる。
概説
主に議会で採決される案件に対し、党全体の意思としてあらかじめ賛成するか反対するかを決めておき、所属議員の表決行動を拘束する。個々人の自由意志で賛否を表明することは容認しない。ひとつの政党が結束して行動するための手段として用いられる。
党議拘束への違反者への処分は、案件ごと政党によって異なるが、除名や党員資格停止などにおよぶこともある。党議拘束は政党内部の規則によって定まるものであり、党則などによって明文化されている場合もある。
党議拘束のありかたは国、政党によって異なる。議院内閣制をとる国々では一般に党議拘束が強いという傾向があるとされている。これは、議院内閣制において行政権を担う内閣を組織するためには議会における多数派の形成が不可欠であり、また政権を獲得してこれを維持し、政策運営を容易にするためにも党議拘束によって多数派の形成を図る必要性が大きいためと説明される。行政府と立法府が厳格に峻別されている米国のように、大統領をはじめ行政府の閣僚(顧問団)の選出に議員が関与しない政治制度では政党規律の意義は低くなる。
党議拘束について政治学では様々な分析が行われている。
党議拘束が強い場合、与党の内部の意志決定が、事実上議案の行方を決める。このことから、議会での議論を形骸化させ、多数決で決める民主主義の根本理念から大きく矛盾する(与党と利害が対立する議案は国会で可決・成立しない)との批判もある。帝国議会においては、尾崎行雄が党議拘束廃止論を唱えたことが知られる。日本では内閣不信任決議案を決議できない参議院で特に、党議拘束を廃止し、参議院での議論の質を高めようという議論もある。また、議論を充実させるために、法案に対する表決時までは党議拘束をかけるべきではない、という議論もある。
一方、個々の議員が党指導部からの拘束を受けることなく投票行動を行うことが可能な場合、利益団体(圧力団体)が特定の利害を要求しつつ個々の議員を説得することで影響力を行使しやすくなるという側面もあり(ロビー活動も参照)、利益集団政治に対しては政党衰退の一因となっているという指摘もある。逆に、政党首脳部が利益団体に影響されてしまう際は議会の防波堤が機能しなくなるとも言える。
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