戦後間もなくは『西田幾多郎全集』発売に長い行列が出来たり、『漱石全集』がベストセラーになったり、ちょっとゆとりのある家庭なら文学全集一揃いが本棚にあるものでした。子どもが小中学生なら少年少女文学全集とかもね。
創元社の『世界少年少女文学全集』は訳者に村岡花子、吉田健一、川端康成、河盛好蔵、岸田国士、阿部知二、高橋健二、山室静、金田一京助、三好達治、中野好夫などが並びましたから豪勢なものです。
まだまだ食糧事情も良くなくて、物質的には今よりもずっと貧しかったけど、文化的には子どもに最高のものを与えていたんだなぁ、と感慨深い。
最近発売された翻訳は、読みやすく、とっつきやすくが優先でまるで薄っぺらい。易しかったら読むと決めつけていいものか?
私が高橋健二、吉田健一などの訳を読んだ日々を思い起こすと、決して易しいとは思わなかったけれど、それだからこそ読み返し読み返し、大人にも聞いたりして読了の満足感も深かったと思いますし、正直に言うと優越感もありましたね。
今の子ども達が知的満足感を知らずに育つのは可哀そうだと感じます。