ヴァルファキスは『テクノ封建制』を書くにあたって、カルブレイスの『新しい産業国家』(1964)を参照したと述べている。
カルブレイスはWWII後の資本主義を「テクノストラクチャー」という概念で分析。これは入門書ではなく、間違いなく名著。
『テクノ封建制』は、いい本だが、いくつか疑問も残る。
一つは国家の強い役割について、ほとんど触れられていないこと。実際には、インターネットは米軍事技術からの派生だし、また世界の強国にはGAFAMを規制、お望みであれば、「お取り潰し」にすることは簡単である。トランプ当選の途端、「ファクト・チェック」の廃止を発表、平伏したザッカーバーグが好例である。またEUもアマゾン、X、アップルへの規制及び課税を発表している。
今一つの疑問ないし驚きはヴァルファキスでさえ、2000年前後にはブロックチェーンや3Dプリンター、果てはSNSにまでデジタル民主主義の可能性を見ていたこと。
これは本人にとっても無惨にも裏切られ、であるからこそ「テクノ封建制」を書くに至った訳だが。
そもそも「アラブの春」は青年人口が多いマグレブで新自由主義の進展のため、若者の失業が急増したことが背景にある。SNSで革命が起こるのなら、日本でもEUでも革命が起こっただろう。