台北に来て三日目、電車にも慣れてEasyCardなるSuicaの台湾版の交通カードをピッと鳴らしながらあっちこっちに行っていると、案内表示のアレンジの仕方が日本にそっくりだし、漢字で地名や路線、地区がわかるだけでなく、エレベーターの作りや地下街やデパートの雰囲気が東京にそっくりなので(似ているところを挙げたらきりがない)、人混みのなかを乗り換えなどしているとまるで東京のどこかを移動しているような錯覚に陥る。しかし、はたと耳に入ってくる言語はやはり中国語。妙な気分である。知っているのに知らない。
ドイツに住みはじめて言葉が分からず風景もまだ慣れない三ヶ月後にサンフランシスコに行ったときに、明らかに慣れない異国なのに信号待ちで近くで喋っている人が英語なのでその内容がよくわかるのが鮮烈だった。知らないのに知っている。あのちょうど逆の感じである。