時刻はとうに21時。つけまは疲れていた。電子の板に滑る指、液晶の向こうに流れる文字の羅列。それらをただぼんやりと眺めていれば、やがて視界は不明瞭に歪んでいく。──ああ、もう眠ってしまいたい。けれど、最後にこれだけ。部屋の窓をがらりと開けると、見飽きたその風景に視線をやりながら、そっと紫煙を燻らす。溜息の最中、ふと、揺蕩う瞳を射止めたたったひとつの呟きに、手指から零れ落ちそうになる煙草を既のところで抑え込んだ。
「わたしのフルネームは愛川らずです って言いたかったのに検索かけたら既に動いてないVtuber出てきて鬱」
途端に混濁する思考。しかし、意に反して唇が動いてしまうのを、止める者は居なかった。
「相変わらず……か」