もう一つややこしいのは、「学術的な名称としては朝鮮が正しい」という言い方に少なくない疑問があることだ。
歴史の教科書を見るとわかるが、1910年の日本による植民地化は「韓国併合」である。この名称は戦後になって変わったとかではなくて、戦前からそうだった。
なぜなのかといえば、当時、朝鮮半島全域を領土とする国家が「大韓帝国」を名乗っていたからだ。大韓帝国は1897年に成立し、それ以前の「朝鮮」という国号を改めている。
このため、1919年に上海で樹立された独立のための政治機関は「大韓民国臨時政府」を名乗ったし、1905年から1910年まで、今のソウルの南山に置かれた日本政府の出先機関も「韓国統監府」を名乗っていた(これは事実上の植民地支配機関で、初代統監は伊藤博文である)。
それが1910年の併合を機に「朝鮮総督府」に名称を変更したのはなぜかというと、定説といえるほどの浸透度があるかどうかは怪しいのだが、日本帝国が独立の機運を消すために「韓国」という言葉を抹殺しようとしたからだ、と解釈されることが多い。