「虎に翼」と戦争。寅子の自宅にGHQの民法改正担当者アルバート・ホーナーが訪れるシーンがあった。寅子の兄直道は戦死しているのだが、その妻の花江は、寅子が「仇の国の人と仕事して仲良くしている」ことにわだかまりを感じている。寅子と二人きりになったとき、花江は「仕方ないわよね。負けたのは日本なんだから」と寅子に言っている。つまり、戦争を描く日本のほとんどのドラマが採用している「日本は戦争でアメリカと戦って負けた」という構図を一歩も出ていなかった。これは、第18週のエピソードからも感じられた。第18週では、星航一が戦前「総力戦研究所」に所属していた事実が明らかになる。同研究所は日米戦争を想定した総力戦の机上演習を行い、「日本必敗」という結論を導き出したにも関わらず、この提言は軍部によって無視された。航一は、戦争が止められなかった責任を感じ、戦争で肉親を失った人々に「ごめんなさい」と言っていたのだ。しかし、そもそもシュミレーションの結果が日本勝利だったらどうだったのだ?というのもあるが、航一のこの「ごめんなさい」からは、アジアへの植民地支配と侵略戦争に対する責任がすっぽり抜けている。