『「モディ化」するインドー大国幻想が生み出した権威主義』読了。
モディは「良いこと」もしたのか?とでもいうべき本。経済政策に目立った成果はないし、そもそも政府が公表しているGDPは根拠があやしい、そんな体たらくにも関わらずBJPが長期政権を維持できているのはなぜなのか。巧みなイメージ戦略と、民主主義を骨抜きにしていく過程が描かれています。5月に出版された本なので今年の選挙でBJPが議席を減らした話は含まれていないです。どういう分析がされているのかあとで調べてみようと思いますが、本書に記載されているように貧困層・農民軽視が酷いままなのであれば、人口のボリュームゾーンである彼らからのNOが突きつけられたのではないでしょうか。
しかし読んでいるとけっこう日本も似たようなところがあるんですね。故安倍晋三も個人としての人気が高かったと思いますし、マスコミが政府の言うことをそのまま言うだけの存在になってしまっていること、隣国の外国人を脅威をもたらす敵と設定して煽ること、データを軽視すること、コロナの専門家チームが政府に対して影響力を持たず言われたことを承認するだけの組織になっていたこと、などなど…。今年の選挙の結果を見ても日本はインドよりも選挙によるチェック機能が働いていないと感じるし、気が滅入ります。
ちなみにヒンドゥー至上主義者がイスラム教徒を様々な形で迫害しているのはもちろんなのですが、おそらく他のマイノリティに対してもしっかり威圧、妨害、暴行などを行っていると思われます。インド仏教指導者の佐々井上人の話には、RSSが活動を妨害しにきたり、夜道で弟子がやっつけられそうになってやっつけ返した(表現をぼかしています)というようなエピソードがいくつかありました。こういった犯罪や人権侵害を西欧諸国や日本がしっかり指摘できず、対中国という目的のためだけに、黙認してしまっていることについても書かれています。