その日は何とサイドオーダーに限ってはお客様をお待たせせずに済んだ。スタッフ同士のおしゃべりや接客、新しいことは苦手だっけれど、そこは分業システムの整った職場だ。それができなくても問題ない。
そしてクリスマスイブ、狂乱の最高潮、スタッフの殺気も頂点に達する謂わば本番の日、彼女はもう大車輪の活躍で美々しいポットパイを途切れることなく作り上げた。忙しく立ち働く合間に「頑張ろう」「疲れたね、大丈夫?」と声をかけるが、彼女は「大丈夫」と答えるだけで休憩もそこそこに職場に戻る。頑張らせ過ぎては、無理をさせてはいけないと気をつけていたが、彼女はやり切った。
ぶっちゃけ、私は誇らしかった。こんなに頑張れる、こんなにすごい仕事ができる、彼女がそのことで笑顔になれる、それが自分に重なって、めちゃくちゃ嬉しかった。やればできるんだよ、我々はさ。そんな気持ち。自信を持ってくれ。あなたは能力がある。そう伝えたかった。そう言おうと思っていた。
が、その日、店がはねてから彼女の母親が来た。彼女を迎えに来たんだ。
そして「ここへ来てからうちの子は生意気を言うようになった」と。家で仕事ができたことを話したらしい。
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