『パレスチナ/イスラエル論』の思想編でもう一つ、改めて認識できるのは、パレスチナ問題におけるジャン・ジュネの存在の大きさだった。昔、自分が田んぼの中に建つ田舎の高校に通っていた当時、自分が足を踏み入れるどんな本屋にも、例えば教科書や参考書などを置いている高校近くの小さな本屋にさえ、新潮文庫のコーナーには、ジュネの『泥棒日記』や『花のノートルダム』サルトルの『聖ジュネ』などが必ず置かれていた。恥ずかしながら自分は、何度もそれらの本を手に取ったりしつつ、一度も買って読んだことはない。今になって、パレスチナの惨状を伝えるニュースを見ながら、早尾さんの本を読み、その解決を考えるヒントとして、ジュネの文章やそれを読み解く梅木達郎や鵜飼哲といったジュネの研究者であり、デリダの研究者でもある人達の文章が引用されていたりるのを読むと、本当に遅まきながらジュネも読んでみようかなあと言う気になった。それにしてもどうしてジュネの研究者はデリダの研究にも深く入って行くのかなどと思ったりする。いずれにしても、早尾貴紀『パレスチナ/イスラエル論』は、今ぜひ読まれるべき本だと思う。