本田由紀(東京大学大学院教育学研究科教授)
昨年12月に可決した国立大学法の変更において、焦点となっていたのは大規模な国立大学を中心として「運営方針会議」を置くということであった。この「運営方針会議」は少数の外部委員から構成され、目標や計画、予算など大学運営の根幹に対して強大な権限をもつとされている。
そして、今年3月7日、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)有識者議員懇談会は、大学の重要な決定に際しては運営方針会議における学外委員の賛同を必ず必要とする方針を打ち出した。外部からの委員の意向が反映されることをいっそう確実にする方針が、法の変更後に後出しで固められたのである。
パー券・裏金・企業献金問題に典型的に表れているような癒着した政財界が、国立大学という、国家にとって重要な知的物理的資産に外から手をつけ、食い荒らす仕組みが、目の前で強化されているのである。知識を長期的に生み出し伝達する役割を担っている国立大学が、どんどん掘り崩されている。