言説空間の重苦しさ 時間かけ、違い受け止める「成熟」を 宇野重規:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASS3W1H76S3WUCVL003M.html
なぜ人は、自分と異なる意見を理解するのではなく、切り捨てるのか。示唆的なのが、評論家の與那覇潤の論考である。縁を結ぶには時間がかかるが、「自分とは違うから敵」と認定して縁を切るなら一瞬である。ネット社会で「勝ち残りたい」という欲求の強い人ほど、時間のかからない選択に傾くと與那覇はいう。
検索するだけで簡単にわかった気になる「総検索社会」において失われるのは、幅広い人間とつきあい、意見の食い違いをまとめていく人間の「成熟」である。検索の結果は「いまの自分の内面」を映し出すに過ぎず、発信するにあたって相手と「縁を切らない言葉」を選ぶべきという結論が実践的である。
他者からの批判を受け止め、取り入れて自分が変わること、それが対話の本質であった。他者を信じるからこそ自分を信じられる。そのための言葉を取り戻したい。