"―サイードにとって「批評」とはどういうものだったのでしょうか。
それが本書を通して考えようとしたことでした。理論的に説明するために、「旅する理論」(『世界・テキスト・批評家』収録論考より)という論考を読解しました。サイードはジェルジュ・ルカーチ(ハンガリーの哲学者)を解釈しながら、「理論」と「批評意識」の関係を論じています。「理論」が学問の制度に吸収されてしまうと、それ自体が支配的なシステムと化してしまう。しかし、支配的なシステムの内部にすでに、それを批判し食い破るような「批評意識」が潜んでいるというんですね。つまり、現行のシステムが立ち行かなくなった時に、そこで革命を起こすことができる意識です。批評とは、私たち自身がもっている、システムを変えていくようなものの見方のことだと思います。"
「エドワード・サイード ある批評家の残響」中井亜佐子さんインタビュー 研究・批評通じパレスチナを発信した生涯|好書好日
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