以上に加えて、規範を市民に広めること、つまり「理性を持ち人権を守りましょう」というアイデアを市民に広めるやり方がある(いわば「新しい啓蒙」。いくつか派閥がある)。
アマルティア・センは規範の重要性を強調する。ザルの目を細かくし、なるべく多くの人権問題を拾い上げるには「目玉の数が多い」方が有利だ。
当たり前すぎて見過ごされがちなことだが、最もキャパが大きな人権擁護機関は各国の行政だ。その一方で、人々の人権を最も大規模に侵害している主体は各国の法執行機関(警察、入管、刑務所など)と治安維持部隊。これは大きな矛盾だ。
理屈の上では政権中枢が人権のアイデアを重視し、司法や行政の現場に人権のアイデアを浸透させることが最も効果が大きい。しかし……
日本国の場合、政権与党である自民党の中に堂々と「人権を撤廃したい」と唱える政治家がいる。政権与党に影響力を行使してきた統一教会や日本会議も人権が嫌いだ。統一教会系の論客は「人権を教えると家庭/教室が崩壊する」と堂々と主張する。そして自民党が憲法改正を進める狙いの一つが人権を無効化すること。
(続く