ヒントは、アマルティア・センの言葉「人権は法だけでは守れない」。センは、法のレイヤーによる保護も大事だが、同時に倫理・規範のレイヤーも大事だと言っている。
世界中の人々が人権のアイデアを共有し、不完全義務として人権擁護を実行する。これにより法と行政の網をすり抜けた人権侵害を防ぐ。
なお、ここで「不完全義務」はカント哲学の用語で、「完全義務」=「必ず果たされなければならない義務」と対になる「なるべく果たした方がよい義務」を指す言葉。私はざっくりと「完全義務は法、不完全義務は倫理に対応する」と考えています。
日本でよく聞く「人権意識を高める」という言い回しがある。厳密かつ実効性を持たせる上では「不完全義務としての人権のアイデアを、わたしたち全員で共有しよう」と言い換えてみると分かりやすいと思う。
国際機関や政府機関による人権の保護はもちろん必要だが、(そして国際機関や政府機関の人権保護機能の実効性を高める努力も必要だが)、それだけでなく、個人のレベルでも「できることをしよう」と考えるのである。