(上からの続き)
貴社が当該本のゲラを竹内久美子氏に送付したという事実は、この本をいかなる層にいかに読ませたいかをよく示すものです。トランス男性、FT系、AFAB当事者に対する「疑い」を以前から持つトランス当事者は、この本を理由にその攻撃を強め、コミュニティは更に分断されるでしょう。当事者による攻撃を「免罪符」として全体の排除言説も勢いを増し、「男らしくない」実際の当事者の身体の状況もあげつらわれ、蹂躙されるでしょう。貴社はそれを望んでいますか。無数の人間が、具体的な個人の身体について好きに言いたて、「こういうところがやはり偽物だ」と否定し、その根拠として出版物を利用することを。
「幼少期に性別違和がなく、思春期以降に突然“性転換”」し、それによって安寧を得た当事者として述べます。私(たち)の身体は、流行でも思考実験の道具でも金を稼ぐための玩具でもない。出版人ならば、名前と顔を持った一個人として実際の当事者に対峙できないまま、このような本を出すべきではありません。